このプラグイン、コントロールはシンプルかと思いきや機能や内部動作的に特徴があるようです。
そういうのは知っておいた方が触りやすくもなるので
自分の理解・メモ用の意味も込めて、マニュアルの中身を自分なりにまとめたものを載せてみようかと思います。
ちょっと長くなりますが、パラメータの説明と使用法・内部構造の話をしていきます。
まずはパラメータの効果を、マニュアルから引用しつつ説明します
MIX LEVEL:
DAW上で-18dBでミックスを行う場合、このスイッチでプラグイン内部のゲインを調整する
ミックス中のトラックなど、最大音量が18dBとなるようなレベルの低いトラックに使用する場合には”-18dB”の方にスイッチし、
マスタリングの2mix等、最大音量が0dBになるようなレベルの大きいトラックには”0dB”にスイッチしましょう。
SC FILTER:
サイドチェイン信号の、ローカットとハイシェルフのブーストを同時にこなします
(有名なハードウェアを参考に作られたらしいです)
マニュアル等にはあまりちゃんと記載されていないのですが、
コンプの検知信号にかけるフィルターを二種類選べるようです。
ツマミをOUT側にすると普通のローカットフィルターですが、
IN側にするとローカットとハイブーストを同時に行うフィルタになり、
IN側のフィルターを使うと、低域をコンプに引っ掛からないようにすると同時に高域を引っ掛かりやすくなります。
SC LOCUTツマミが一番左の状態でも、ツマミをINにするだけで中~高域の圧縮が強まります。
SC ROUTE:
「EXT」に設定すると3.4chからの外部信号サイドチェインに対応し、
「INT」にすると内部信号を使用します
普通のコンプとして使うかサイドチェインコンプとして使うかですが、
どちらの場合においてもサイドチェインフィルタは有効になります
INPUT:
単純に直線的なインプットゲイン調整ツマミ
コンプに突っ込むレベルを調整します。上げれば上げるほど沢山コンプレッションがかかります。
ATTACK:
コンプレッサのエンベロープのアタックタイム調整ツマミです。
アタックタイムのタイミングはprogram-dependent(入力信号の大小や周波数に従って値が変化する)なので、
表示されている値はおおよその物と考えてください。
これはドラムのループなんかにかけてみると分かりやすいのですが
バスドラはしっかり潰してくれけどスネアになると若干遅くなったり、大きい入力に対しては速くなったり、
そんな感じです
RELEASE:
コンプレッサのエンベロープのリリースタイム調整ツマミ。
リリースタイムのタイミングは「かなり」program-dependentなので、表示されている値はおおよその物と考えてください。
入力が大きいと速くなります。アタックタイム以上に入力信号依存で変化するようです。
また、ゲインリダクションが0に近づくにつれてリリースのリカバリが遅くなっていく特性があります。
IN-GR-OUT:
中央のメーターの動作モードを選択します。INはINPUTつまみ後のレベルを、
OUTはOUTPUTつまみ後段のレベルをそれぞれ表示し、
GRはゲインリダクションの量を表示します。
説明は割愛
SC LOCUT:
サイドチェイン信号にかかる1ポール(6dB/oct)のローカットフィルターのつまみです。
DCオフセット成分を除去するために(コンプがDCオフセット成分に反応しないように)
一番左に回しても最低20HzのLPFが常時かかっていますが、
最大で500Hzまで設定することができます。
ツマミを右に回すほど、低域がコンプにかからないようになります。
RANGE:
コンプレッションのカーブを変化させる事でゲインリダクションの量を制限します。
ツマミを一番左に回すとカーブがリニアになります(ゲインリダクションがなくなります)。
時計回りに回すとコンプレッションの量が増えて行きます。
普通のコンプレッサのレシオとは違い、
最大リダクション量を決めるタイプのパラメータです。
一番左でゲインリダクションは0dB、50%で最大10dB、100%にすると最大20dBのリダクションが出来ます。
OUTPUT:
リニアに変化するアウトプットゲイン調整ツマミ
説明は割愛
ON:
スイッチをOFFの時にトゥルーバイパス
割愛
INTERSTAGE:
コンプレッサのインターステージセクションの有効/無効を設定します。
このツマミをONにすると、ゲインリダクションに合わせて動的に反応する二次倍音の歪みを生成します。
(THDが一番左の状態でも倍音が発生します)
オンにするとプラグインインターフェースの下部にパラメータが現れます。
これで更に奇数倍音歪みの生成をコントロールでき、
倍音の発生個所を周波数全域か一部に対してかを設定できます。
英文直訳っぽくなってしまったので噛み砕いて言うと
二次倍音の歪みははINTERSTAGEをONにするとGRに合わせて自動的に生成れる(細かい操作は不能)
奇数倍音の歪みの量等はINTERSTAGEの各パラメータで操作可能
という事です。
SPECTRUM:
このスライダーは、奇数倍音歪みの周波数範囲を調整します。
- FULL:周波数ほぼ全域をカバーします。
- LF:低周波数域を強調します。低域の質感を変えるのに最適です。
- 500Hz:周波数の強調が500hz付近に対して行われます。「暖かさ」を付加することができます。
- 800+ Hz:主に800~1000Hzで動作し、ベース楽器の高域成分をはっきりさせる事ができます。
- 2-5 kHz:高域の具合を改善させるのに適していて、ボーカルや2mixに明瞭さや艶を付け加える事ができます。
- HF:高域不足の素材やオーディオ補修の用途に、高域のエキサイタとして活用できます。2mixに高級な輝き感を付加できます。
割愛します
TRANSFORMER:
アナログ回路でのトランスのような音質変化をもたらします。
周波数と負荷に応じて歪みを生成し、低域にトランス独特の歪みを付加して「重み」を出します。
この機能はTHDがオンの時のみに動作し、更にSPECTRUMモードがFULL、LF、500Hzいずれかの場合にしか動作しません。
また、既に全高調波歪み(THD)がある素材にしか効果がありません。
音的には、主に低域~中低域が歪んで少し持ち上がります。
THD:
INTERSTAGEがONの時、奇数倍音の歪みの量を調整します。
レベルメーターは倍音がどの程度生成されているかを可視化します
(メーターと実際の倍音の量は、特にSPECTRUMが高域側の時、実際と異なる可能性があります。メーター表示は実際の信号の周波数状態とSPECTRUMの設定によって異なります)
割愛です
また、上記パラメータ以外にも特殊な内部動作があるので、
それについてもマニュアルから引っ張ってきました。
サイドチェインリンクとチャンネルリンクについて
ステレオバスでサイドチェインを設定するのは重要で、
外部信号と内部信号の二つの方法で扱うことができます。
この洗練されたサイドチェインアルゴリズムはステレオのトランジェントを自然に保つだけでなく、
強く潰して問題のあるステレオイメージを改善することもできます。
両チャンネルのリンクは、ゲインリダクションが1dB以内の時は解除されています。
1dBを超えると、ゲインリダクション量が増えるとともに両チャンネルは徐々にリンクしていきます。
ただし、急なトランジェントが来てもすぐに他方のチャネルに影響を与えないよう、スルーする設定となっています。
Interstageでの倍音の生成にはチャンネルリンクが解除された信号が使われます。
静的なチャンネル間クロストーク(周波数依存)の生成にのみチャンネルリンクした信号が用いられます。
以上、解説というかパラメータ和訳だらけになってしまいましたが以上となります。
何か突っ込みどころがあったりしたら教えて頂けると嬉しく思います。
作者のbootsyさんも言っていますが、
インプット・アタック・リリース・レンジ辺りの挙動を覚え、相関的な動作を理解するのが使いこなしへの第一歩です。
まずはコンプ部を設定してから、必要に応じてインターセクション部で色づけ/補正、
という手順が推奨されています。
「機能のおかげで、Fairchildスタイルの1~2dBの優しいバスコンプレッションから激しいドラムコンプレッションまで、幅広い用途に使用できる」との事で
プリセットにもそういった名前の物が入っているのでチェックしてみてはいかがでしょうか?